令和6年7月に、厚生労働省から
児童発達支援、放課後等デイサービスの新しいガイドラインがそれぞれ出ています。
自分の理解と支援に活かすために、読んでまとめておこうと思います!
「放課後等デイサービスガイドライン」と「児童発達支援ガイドライン」の内容は、重なっている部分も多くあります。
なのでこちらの記事では、児童発達支援ガイドラインと異なっている部分に焦点を当ててまとめます。※こちらも第3章までとなります。
乳幼児期の支援(=児童発達支援)を基礎にしながら、学齢期のこどもの場合は特に何を考慮するべきか、ということが書かれている印象だったよ
Contents
【第1章 総論】の要点
総論では、「2.こども施策の基本理念」のところで
「こどもの居場所づくりに関する指針」(令和5年12月閣議決定)
について書かれています。
- 全てのこども・若者が、安全で案して過ごせる多くの居場所を持てること
- 様々な学びや、社会で生き抜く力を得るための糧となる多様な体験活動や外遊びの機会に接すること
- 自己肯定感や自己有用感を高め、こどもが本来持っている主体性や創造性を十分に発揮して社会で活躍していけること
- そのために「こどもまんなか」の居場所づくりを実現すること
また、障害児通所支援に携わる者は
- 「こどもの居場所づくりに関する指針」の内容も十分に理解して、居場所づくりを進めるという視点も持ちながら、こどもや家族の支援に当たっていくこと
- 障害の有無にかかわらず、全てのこどもが地域社会の中で多様な居場所を持つことができること=「誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援」の重要性を認識し支援に当たること
- 障害の有無にかかわらず全てのこどもが意見を表明する権利の主体であることを認識し、言語化された意見だけでなく、様々な形で発せられる思いや願いについて、丁寧にくみ取っていくこと
【第2章 放課後等デイサービスの全体像】の要点
全体像では次のように項目が分かれています。
1.定義…「放課後等デイサービス」は児童福祉法においての規定
2.役割…「本人支援」「家族支援」「移行支援」「地域支援・地域連携」からなる
3.原則…(1)目標 (2)方法 (3)環境 (4)社会的責任
ここでは3.原則のなかの「目標」と、「方法」の留意事項にある放課後等デイサービス独自の部分を見ていきます
放課後等デイサービスの目標
学童期は、児童期から青年期へと向かう幅広い人格形成の時期であることから
放課後等デイサービスでは、
- 一人一人の人間性の成長に目を向けること
- 安心・安全で自分らしく過ごせる居場所となること
- 学校や家庭とは異なる時間、空間、人、多様な遊びや体験活動等の機会を提供すること
- こどもが自己肯定感や自己有用感を高められること
…が重要なので、以下を目標として支援を提供すること、となっています。
- 生きる力の育成とこどもの育ちの充実
- 家族への支援を通じたこどもの暮らしや育ちの安定
- こどもと地域のつながりの実現
- 地域で安心して暮らすことができる基盤づくりの推進
②~④は児童発達支援と同じだよ!
放課後等デイサービスの方法
方法では、児童発達支援と同じく
「5領域の視点を踏まえたアセスメントにより、総合的かつオーダーメイドの支援」に加えて、
以下のことが書かれています。
留意事項では、
- 児童期から青年期は、年齢とともに発達上のニーズが変化したり、二次障害やメンタルヘルスの課題を抱えたりするなど、様々な課題に直面するとともに、人格を形成する時期にあることから、自尊感情や自己効力感を育むことができるように支援すること
- 自尊感情や自己効力感の土台となる保護者への支援
- 大人になる準備を含めた将来の日常生活や社会生活に向けた準備を支援
【第3章 放課後等デイサービスの提供すべき支援の具体的内容】の要点
放課後等デイサービスの提供にあたっての留意事項
第3章では初めに「提供にあたっての留意事項」として、
- 放課後児童クラブ運営指針の「育成支援の内容」
- 特別支援学校小学部・中学部・高等部の学習指導要領
また、放課後等デイサービスを利用する6歳~18歳を4つの区分に分けて、それぞれの年齢区分での留意事項が示されています。
また、留意事項として
- 障害のあるこどもは、一定の年齢に達しても保護者や他の大人から「こども」と見られることも多いが、大人になる過程にある一人の人間として対応していくことが重要
- また、この区分はあくまでも一人一人のこどもの発達過程を理解する目安として捉えること
- 学校生活の中で、読み書きや計算の基本的技能を習得し、日常生活に必要な概念を学習し、係や当番の社会的役割を担う中で、自らの成長を自覚していく
- 一方で、まだ解決できない課題に直面したり、他者と自己を比較し、葛藤も経験する
- 遊び自体の楽しさの一致による集団構成から、仲間関係や友達関係に発展することもある。ただし、遊びへの参加がその時の気分に大きく影響されるなど、幼児的な特徴も残している
- ものや人に対する興味が広がり、遊びの種類も多様になる。好奇心や興味が先に立って行動することが多い
- 大人に見守られることで、努力し、課題を達成し、自信を深めていくことができる。その後の時期と比べると、大人の評価に依存した時期である
- 論理的な思考や抽象的な言語を用いた思考が始まる
- 道徳的な判断も、結果だけでなく動機を考慮し始める
- お金の役割等、社会の仕組みについて理解し始める
- 遊びに必要な身体的技能がより高まる
- 同年代の集団や仲間を好み、大人に頼らずに活動しようとする
- 他者の視線や評価に一層敏感になる
- 言語や思考、人格等のこどもの諸領域における質的変化として表れる「9,10歳の節」と呼ばれる大きな変化を伴っており、特有の内面的な葛藤がもたらされる。この時期に自己の多様な可能性を確信することは、発達上重要なことである
- 様々な知識の広がり。自らの得意不得意を知る。
- 日常生活に必要な様々な概念を理解し、ある程度計画性のある生活を営めるようになる
- 大人から一層自立的になり、少人数の仲間で「秘密の世界」を共有する。友情が芽生え、個人的な関係を大切にするようになる
- 身体面において第2次性徴が見られ、思春期・青年期の発達的特徴が芽生える。しかし、性的発達には個人差が大きく、身体的発育に心理的発達が伴わない場合もある
- 個々の発達段階や興味・関心に応じ、心や身体の発育や発達に関して正しく理解することができるよう、性に関して学ぶ機会を多くつくることが重要である
- こどもから大人へと心身ともに変化していく大切な時期であり、第2次性徴などの身体的変化や精神的変化に戸惑いを感じる時期である。
- こうした戸惑いと親からの自立を目指した一連の動きは、反抗的、攻撃的な態度として表れることも多く、情緒的・精神的に不安定となる危険性がある
- この時期、共通の立場にある仲間とお互いに共感し心を通じ合わせることで、危機を乗り越えていくことも可能となる
- 一方で、同じ年齢や同性の仲間との間に生じるストレスや心理的ショックなどが「劣等感」として定着してしまうこともある
- 思春期前に培われた自己有能感を基盤として、大人とだけではなく仲間との関係性も重視し、進学や就労など次のステージへ向かう力が生まれるようにサポートすることが求められる
- 性については引き続き、個々の発達、興味関心に応じて学ぶ機会を多く作ることが重要
りっぽも中学時代不安定すぎて、あとから思うとかなり危険な時期だったよ
放課後等デイサービスの内容
内容は、児童発達支援と同様に、放課後等デイサービスでも
- 「本人支援」「家族支援」「移行支援」「地域支援・地域連携」を総合的に提供していくこと
- 「本人支援」は5領域(「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」)の視点を踏まえたアセスメントを行ったうえで、総合的かつオーダーメイドの支援を提供すること
それに加えて放課後等デイサービスでは、次の「4つの基本活動」を複数組み合わせながら支援を提供すること、とあります。
- 「自立支援と日常生活の充実のための活動」
- 「多様な遊びや体験活動」
- 「地域交流の活動」
- 「こどもが主体的に参画できる活動」
(1)本人支援
本人支援では、「5領域の内容」に加えて「4つの基本活動」「配慮事項」「留意点」が示されています。
ここでは、児童発達支援ガイドラインの内容と異なる放課後等デイサービスならではの内容のみを取り上げていきます。
5領域内では、
- (ア)健康・生活「生活におけるマネジメントスキルの育成」
- (オ)人間関係・社会性「情緒の安定」「他者との関わり(人間関係)の形成」
- 障害の特性や身体各部の状態について理解し、それらが及ぼす生活上の困難や補助器具を用いる際の留意点等について理解し、状況に応じて自己の行動や感情を調整したり、他者に対して主体的に働きかけたりして、より生活しやすい環境にしていくための支援をする
- 自分で何をするかアイディアを出しながら、自分の生活をマネジメントできるよう、こどもの意向を受け止めながら、自分で組み立ててできる行動を増やしていけるよう支援する
- 自分の特徴や困難を理解して、自分でコントロールしたりまわりに働きかけたりできるようになること
- また、受け身じゃなく、自分から自分の生活を組み立てられるようになること
が目標だね
- 自身の感情や気持ち、生理的な状態増に関心を持ち、その変化の幅を安定させることに興味を持てるよう援助し、変化の幅が小さく安定した情緒のもとで生活できるように支援する
- 他者の気持ちや意図を理解し、他者からの働きかけを受け止め、それに応ずることや場に応じた適切な行動ができるように支援する
4つの基本活動
- こどもの発達に応じて必要になる日常生活における基本的な動作や自立を支援するための活動
- こどもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする
- こどもが通う学校で行われている教育活動を踏まえ、その方針や役割分担を共有できるよう学校と連携を図りながら支援する
- 遊び自体に子どもの発達を促す重要な要素が含まれているため、挑戦や失敗を含め、屋内外を問わず自由な遊びを行う
- 多様な体験の機会を提供する
- こどもが望む遊びや体験、余暇等を自分で選択できるように、多彩な活動プログラムを用意する
- その際、個別性に配慮された環境やこどもがリラックスできる環境の中で行えるよう工夫する
- 地域の中にこどもの居場所をつくりながら、こどもの社会経験の幅を広げていく
- 地域資源も活かして遊びや体験の機会をつくる
- ボランティアの受け入れ等により、積極的に地域との交流を図る
- こどもとともに活動を企画したり過ごし方のルールをつくったりするなど、こどもが主体的に参画できる機会を設ける
- 子供が意見を表明しやすい環境づくりを行い、こどもとともに活動を組み立てていく取り組みを行う
配慮事項・留意点
- 将来的な強度行動障害の予防について、特に学童期や思春期になると、行動上の課題がより顕在化しやすくなる
- 現在の行動上の課題やその行動の意味等にも着目する機能的アセスメントを行い、それを踏まえて、こどもが安心して過ごせるための環境調整や個々の支援を行う
- 「事物の獲得(したい・ほしい)」
- 「課題からの逃避(しなくて済む)」
- 「注意の獲得(見てほしい)」
- 「感覚刺激を得る(刺激が欲しい)」
などがあるよ
- 思春期は、他者との関わりや社会との関わりの中で、自分の存在の意味や価値、役割を考え、アイデンティティを形成していく時期である一方、様々な葛藤を抱える繊細な時期でもある
- 自己肯定感を高められるよう、こどもの意思を受け止めつつ、悩みや葛藤、個別性に合わせて寄り添って支援を行う
- メンタルヘルスの課題も顕在化してくる年代であるため、こころの不調や病気の兆し、症状やその特徴を理解して支援を行う
- 必要に応じて医療機関や地域の相談窓口となる機関と連携を図る
- 高校卒業後の進路に向けた準備への支援
- こども本人の気持ちに寄り添い、共感することで自己肯定感を高める
- 学校や家庭、関係機関と連携したアセスメントを行い、登校しない、あるいはしたくてもできない状況が生じている要因や背景について把握・分析を行う
- 個々のニーズに応じて必要な支援を個別支援計画に位置付けたうえで、計画的に支援を進める
- こどもの学びの場を確保し、学びたいと思ったときに学べる環境を整えることも重要なため、こども本人の意思を尊重しながら学校等や家庭と連携を図り、必要な対応や方策の検討を行う
- その際、学校等は質の担保された教育機関であり、学校教育を受けられないことで将来にわたって社会的自立を目指すうえでリスクが存在することを踏まえ、安易に不登校の状態が継続することのないように留意する
(2)家族支援 (3)移行支援 (4)地域支援・地域連携
家族支援では「ねらい」「支援内容」は児童発達支援とほぼ同様になります。
配慮事項として
- こどもが学齢期に診断を受ける場合や、年齢とともに子どもの発達上のニーズが変化する場合には、保護者が子どもの障害や発達の過程を含むその子のありのままを受け止め肯定していくプロセスを支えることが重要
- 学童期には二次障害やメンタルヘルスの課題、不登校など様々な課題を抱える年代であることを踏まえ、家族が様々な葛藤に直面する時期であることから、こどもと家族をトータルで支援していくことが重要
- 家族の様々な不安や負担を軽減していく観点を持つこと
まとめ
放課後等デイサービスガイドラインは、児童発達支援ガイドラインと重なっている部分も多いですが、年齢が6~18歳と幅広く、各年代で発達の特徴が異なることや、大人に向けて大きく変化していく学童期~思春期ならではの課題も多くありました。
こんにちは!りっぽです
児童発達支援・放課後等デイサービスで働く療育保育士(新米)です!
長年イラストレーターもやってます