物語の中心軌道を抜き出す

 

こちらの記事は『スクリプトドクターの脚本教室・初級編』(三宅隆太著/新書館)の内容を参考にしています。

 

既存の作品から学ぶ意味

 

既存作品の構造を下敷きにして、新たな作品を生み出すことは「盗作」ではありません。

物語の構造は、古今東西で再利用され続けています。

 

作曲でも、「コード進行」は引用可能です。

様々なジャンルで既存の構造の再利用がされています。

 

同一構造を引用することで、軌道に迷いがなくなり、

「あなたならではの世界観やオリジナリティ」が盛り込みやすくなります。

 

「盗作」でなく、全く新しい物語として「拡大再生産」するためには、

構造の「抽象化」が必要になります。

 

モチーフと点と線

 

優れた物語では、クライマックスまでの軌道の要所要所に、

繰り返し同じモチーフ(具体的な行為)が組み込まれています。

 

一つ一つのエピソードは「点」のように見えても、

実際には明確な方向性を持って進む「線」(軌道)となるように組み立てられています。

 

単に「点」が反復しているのではなく、「増幅」しながらクライマックスへ向かいます。

 

中心軌道を抜き出す方法

 

中心軌道とは物語を貫く「葛藤の流れ」です。

 

既存の物語の中心軌道を抜き出す方法

固有性・具体性を剥ぎ取り、

シンプルに抽象化した中心軌道だけを抜き出す。

主人公、敵対者、環境などの関係性を「X、Y、Z」の3つに絞る。

 

三宅隆太さんの著書は「脚本教室」なのでいくつもの映画の「中心軌道」例が載っています。

絵本では、主人公の「葛藤」を描かない作品も多いですが、同一構造の引用は有効です。

手元にある絵本で中心軌道を抜き出してみました。

 

<例1>

XはZという新たな環境に入り込む。

そこで別種のYと出会い、ともに旅をする。

互いの素性を気にせず過ごすXとY。

やがて時が来てXはYと別れ元の世界へ戻っていく。

 

<例2>

XとYは仲間。Zという困難な状況に出会う。

2人で力と知恵を合わせて困難な状況を克服し、報酬を手に入れる。

 

<例3>

Xは仲間とは違う特色を持っている。

仲間は自分たちと同じにしようとするが、Xは自分の特色が自分自身だと思い、

その環境を離れる。

やがて新しい環境で認め合えるYに出会い、そこでYとともに自分らしく暮らす。

 

いかがでしょうか?

絵本の場合も構造を抽象化し、そこからオリジナル作品を生み出すことはできそうですね!

 

ちなみに上の構造を抜き出したもとの絵本は、

上から『もりのなか』『ぐりとぐら』『わたしはあかねこ』です。

 

構造の引用と再構築に必要なこと

 

既存の物語から新たなオリジナルを再構築するカギは、

作家の眼差し(世界観)次第です。

 

また、構造を徹底的に「抽象化」することと、そこから「類推」する必要があります。

類推とは、抽出した構造と同じ構造を、まったく違う場所から見つけ出すことです。