こちらの記事は『スクリプトドクターの脚本教室・初級編』(三宅隆太著/新書館)の内容を参考にしています。
既存の作品から学ぶ意味
既存作品の構造を下敷きにして、新たな作品を生み出すことは「盗作」ではありません。
物語の構造は、古今東西で再利用され続けています。
様々なジャンルで既存の構造の再利用がされています。
同一構造を引用することで、軌道に迷いがなくなり、
「あなたならではの世界観やオリジナリティ」が盛り込みやすくなります。
「盗作」でなく、全く新しい物語として「拡大再生産」するためには、
構造の「抽象化」が必要になります。
モチーフと点と線
優れた物語では、クライマックスまでの軌道の要所要所に、
繰り返し同じモチーフ(具体的な行為)が組み込まれています。
一つ一つのエピソードは「点」のように見えても、
実際には明確な方向性を持って進む「線」(軌道)となるように組み立てられています。
単に「点」が反復しているのではなく、「増幅」しながらクライマックスへ向かいます。
中心軌道を抜き出す方法
中心軌道とは物語を貫く「葛藤の流れ」です。
三宅隆太さんの著書は「脚本教室」なのでいくつもの映画の「中心軌道」例が載っています。
絵本では、主人公の「葛藤」を描かない作品も多いですが、同一構造の引用は有効です。
手元にある絵本で中心軌道を抜き出してみました。
XはZという新たな環境に入り込む。
そこで別種のYと出会い、ともに旅をする。
互いの素性を気にせず過ごすXとY。
やがて時が来てXはYと別れ元の世界へ戻っていく。
XとYは仲間。Zという困難な状況に出会う。
2人で力と知恵を合わせて困難な状況を克服し、報酬を手に入れる。
Xは仲間とは違う特色を持っている。
仲間は自分たちと同じにしようとするが、Xは自分の特色が自分自身だと思い、
その環境を離れる。
やがて新しい環境で認め合えるYに出会い、そこでYとともに自分らしく暮らす。
いかがでしょうか?
絵本の場合も構造を抽象化し、そこからオリジナル作品を生み出すことはできそうですね!
ちなみに上の構造を抜き出したもとの絵本は、
上から『もりのなか』『ぐりとぐら』『わたしはあかねこ』です。
構造の引用と再構築に必要なこと
既存の物語から新たなオリジナルを再構築するカギは、
作家の眼差し(世界観)次第です。
また、構造を徹底的に「抽象化」することと、そこから「類推」する必要があります。
類推とは、抽出した構造と同じ構造を、まったく違う場所から見つけ出すことです。
固有性・具体性を剥ぎ取り、
シンプルに抽象化した中心軌道だけを抜き出す。
主人公、敵対者、環境などの関係性を「X、Y、Z」の3つに絞る。