こちらの記事は『スクリプトドクターの脚本教室・初級編』(三宅隆太著/新書館)の内容を参考にしています。
「自分はこういう性格だから仕方ない」
なんて思うことはありますか?
性格は生まれつきのものではなく、環境や経験によりつくられていくものです。
今回は、性格がつくられる仕組みと「ストーリー」との関係についての記事です。
性格とは思考パターンの集合体
思考パターンというのは、ある状況に対する反応のパターンです。
特に、その人にとって「ある危機的な状況」になった時、
自分の心を守るために「こうすれば乗り切れる」という思考方法を生み出し、
危機的状況を回避しようとします。
その経験により、同じような状況が現れると自動的に
同じ(危機回避に成功した)思考パターンが発動されます。
同じような行動パターンを繰り返すうちに、
それが他者や自分にとって「性格」として捉えられるようになります。
思考パターンの流れ
思考パターンは次のようなプロセスをたどります。
- 環境から「刺激」を受ける
- 自分の「価値観」に照らし合わせて「認知」する
- 「感情」が生まれ「身体反応」を起こす
- 「感情と身体反応」に基づき「行動」を起こす
- 「結果」が生じ、②にフィードバックされることで「価値観」が強化される
例として、いくつかの思考パターンを考えてみます。
- ママと公園に行ったら遊具で知らない子が遊んでいる
- 「知らない子の中に入るのは怖い」と思う(価値観)
- 「行きたくない」という感情生まれ、足が動かなくなる
- ママの後ろに隠れ「遊具で遊ばない」ことに決める
- やっぱり知らない子は怖い、という価値観が強化される
- 司会が皆の意見を求める
- 「間違ったことを言ってはいけない」と思う。
- 胸がドキドキしてくる
- 指されないようにうつむいて小さくなる
- 「やっぱり会議で意見を言うのは向いていない」という価値観が強化される
ポジティブな「価値観」の場合も同じです。
-
- 散歩していたら知らない分かれ道があった
- 「知らない道はおもしろい」という価値観
- わくわくして、行ってみたいと思う
- 知らない道に行ってみる
- 「やっぱり知らない道はおもしろい」という価値観が強化れる
こうした思考パターンと行動パターンの繰り返しで
「引っ込み思案」「好奇心旺盛」などの「性格」が定着していきます。
一時期な避難所としての思考パターン
思考と行動のパターンはもともと、
その人が一時的に自分の心を守るために生み出したものです。
一時期な心の避難所だったはずの思考パターンが意識のうちに定着し(自動思考)、
思考のクセになります。
それが本来の自分の性格だと思い込んで、ますます行動を変えることが難しくなっていきます。
その「思考のクセ」が「本来の自分の望む方向」や「本来の性質」と違う場合は、
心の底で不満、苛立ちを覚えるようになります。
それは今となっては、本来の自分に「ブレーキ」をかける不要な思考パターンと言えます。
変えられるのは「行動」
思考パターンの流れの中で、変えられるのは④の「行動」です。
「感情と身体反応」を感じつつも、
「行動」を変えることで「結果」が変わります。
行動を変えることで、「思考のクセ」から抜け出すことができます。
物語のストーリーは主人公を行動させることで進む
物語のストーリーは、主人公を自ら行動させることで進みます。
行動せず思い悩んでいるだけでは、物語は進まない、
あるいは読者の心を動かす物語にはなりません。
物語を推進させるには、主人公が行動せざるを得ない状況に追い込むこと。
主人公の性格(世界観、思考パターン)を明確に設定し、
主人公を追い込むことで
主人公自らに、思考パターンの④の「行動」を変えさせる。
これがストーリーを進めるコツです。
まとめ
性格はもともと備わったものではなく、
後から身に付けていった「思考パターン」の集合体です。
「思考パターン」に縛られていると、本来の自分の望みにブレーキをかけている場合があります。
「行動」を変えることで、思考パターンの流れから抜け出し、
望む方向に向かうことができます。
物語では、主人公の世界観・思考パターンを明確に設定して、
主人公に行動を起こさせることでストーリーを進めます。
その人の「思考パターン」の集合体です。