この記事は『絵本づくりトレーニング』(長谷川集平/著)を参考にしています。
Contents
絵本のめくる効果
長谷川集平さんは
絵本を「本という形であること」と限定しています。
「絵本」というのは形態、形のことで
本以外の形の表現は「絵本」とは考えない。
たまたま本という形だったために「めくる効果」が発見された、
と長谷川さんは考えています。
「おべんとう絵本」をつくってみる
『絵本づくりトレーニング』の中の最初の課題が「おべんとう絵本」。
この絵本の絵は「黒丸」だけで構成されます。
(この黒丸が日の丸弁当のようなので、「おべんとう絵本」なんですね)
一見開きの画面をめくると、次の画面では黒丸が変化している。
(あるいは変化しない同じ黒丸が現れる。)
偶然性を入れて、黒丸の変化からお話を考えていきます。
- めくる効果
- 左右の意味
- キャラクターの一貫性
- ことばの役割
おべんとう絵本の作り方
B6のカードを15枚用意します。
7枚を二つ折りにし、それぞれ天地左右の真ん中に3cmくらいの円を描き、マジックで塗りつぶします。
残りのの白紙のカードも二つ折りにします。
1枚の黒丸のカードと1枚の白紙のカードをペアにして、
左開きで黒丸→白紙になるように張り合わせます。
これを7組つくります。
めくった白紙のページに、「変化した黒丸」を描きます。
大きさや数は自由です。
7組を重ねて、トランプのようによくきります。
(複数人でやる場合は、ここでババ抜きのように1枚ずつ隣の人と交換していきます。)
残った1枚の白紙のカードも入れて重ね合わせてよくきります。
二つの山に分け、片方の山を天地をひっくり返します。
(この工程により、「真ん中の黒丸→変化した黒丸」だった順番に変化が出ます)
再び重ねてよくきります。
そのままの順で左開きの本になるように張り合わせます。
何度もめくってお話を考え、文字を書き入れます。
表紙にタイトルと作者名を書いて、
出来上がり!
やってみることで分かること
本の形にするまでは単純で機械的な作業です。
偶然の並び順からできた黒丸の「絵本」から
ストーリーを考えていきます。
出来上がった「絵本」を5歳の娘に読んであげた感想は…
「全然おもしろくなーい!」
でした(笑)
まあ、この黒丸絵本を子どもが見ておもしろいようにするのは
なかなかハードルが高い、と思うんですけど。
実際自分で手を動かしてつくり、
「めくる効果」や「ことばの役割」を実感することが目的ですね。
めくる効果
ぱたぱたと、自分で何度もめくって展開を考えることで
めくる効果はすぐに実感できます。
左右の意味
絵本では、左開き(文字が横組み)の場合、
一つの画面の中で時間は右へ右へと流れていきます。
左にあれば退いているように見えます。
右開き(縦組み)の絵本では、左右の意味が逆になります。
キャラクターの一貫性
一冊の絵本の中でキャラクターに一貫性があることは重要です。
一つのキャラクターが理由もなく姿を変えていたら
スムーズにストーリーが展開しません。
「おべんとう絵本」では
「黒丸」のキャラクターが一貫性を持って展開していきます。
ことばの役割
実際やってみると分かりますが、
ことばを入れなければ、この一冊の「黒丸絵本」から
無数のストーリーが生まれていきます。(おもしろいかは別として)
「黒丸絵本」をめくりながらストーリーを考えていると、
ことばを入れず、無数の可能性をそのままにしておきたい…
という気持ちにもなります。
ですが、それでは絵本という作品になりませんね。
作者が限定し、決めていく。
限定していかないと、先に進まない。
決断していくことも重要だと思いました。
ことばを入れることで、
限定していくことと、
逆にことばからイメージが開かれていくこと
の両面があります。
絵本づくりは手を動かすこと
何より実感したのが、
絵本づくりは、こうして実際に手を動かして、
何度もめくったり効果を確かめたりしながらつくっていくものなんだなぁということ。
頭の中で考えるだけじゃなく、
何度も何度も作業しながら考えていくものだと感じました。